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ダークナイト [2008年 ベスト20]

ダークナイト」(2008年・アメリカ) 監督:クリストファー・ノーラン

 前作「バットマン・ビギンズ」をはるかに凌ぐ出来栄えに驚いた。

 僕はカタカナ英語のトラップにはまり、タイトルを「DARK NIGHT」と勘違いしていた。
 実際は「DARK KNIGHT」。
 タイトルからヒーローの名を下ろした監督の覚悟は本編を観れば明らかになる。
 「バットマンはヒーローじゃない」
 本作の醍醐味はこの一点に尽きる。

 とにかくビターだ。
 ブライアン・シンガーが作った「スーパーマン リターンズ」も傑作だったけれど、まさに明暗分ける仕上がり。星条旗カラーを纏うクリプトン星人は文字通りスーパーな力で絶体絶命のピンチを救う。しかし、ゴッサムシティのペントハウスに住む青年には力の限界がある。クリストファー・ノーランはそこを突いた。バットマンに与えた4つの究極の選択。これらが「ダークナイト」を面白くしている。
 特に重要なエピソードが、ジョーカー(ヒース・レジャー)によって地方検事ハービー・デント(アーロン・エッカート)とかつての恋人レイチェル(マギー・ギレンホール)が別々の場所で監禁される、というもの。いずれにも時限爆弾が仕掛けられ、バットマンが自ら救えるのはどちらか一人。そしてバットマンはジョーカーのトラップにはまる…。ブルース・ウェインが「自分はヒーローじゃない」と自覚する瞬間だ。そしてバットマンはさらに闇の中へと向かっていく。

 クリストファー・ノーランがタイトルから「BATMAN」を下ろしたのは、トヨタ自動車が「レクサス」という新しいブランドを生み出したのに似ていると思った。
 トヨタはクラウンやセンチュリーと言った高級サルーンを作るメーカーだが、それ以前に“世界の大衆車”カローラを生産するメーカーでもある。
 トヨタが世界のトップメーカーになるためには、薄利多売の商売だけでは勝てないことも分かっていた。メルセデスやキャディラック、リンカーンが幅を利かせる、より利益率の高い高級車市場への参入が不可欠だったのだが、そのためには大きな障害があった。
 「トヨタ」の歴史である。
 新しい富裕層にとって、トヨタは古臭いブランドでしかなかった。
 そして、どんなに優れた高級車を作ってもビッグヒットは見込めないだろう、という読みがトヨタにもあった。
 たとえば一個100円のキャベツを売っていたスーパーマーケットが、突如ブランド物のバッグを並べても絶対に売れないのと同じ。なぜなら、そこにはステイタスが存在しないからだ。
 顧客が求めているのは形ある商品だけではない。高額商品を売るためには顧客の心理を満足させるブランディングが必要なのである。

 「バットマン」は1939年に誕生し、20世紀中に多くのテレビドラマと映画が作られた。
 初の実写化は1943年。66年にはテレビシリーズが制作され、77年にはアニメシリーズにもなった。ティム・バートンのリメイクは1989年。以降20世紀中に3本の続編が制作され、2005年に新シリーズ「バットマン・ビギンズ」がリリースされたのは記憶に新しい。
 「バットマン」にも歴史がある。
 つまり、クリストファー・ノーランは「どんなに面白い映画を作ったとしても、『バットマン、またやるの?』という風評だけは絶対に避けなければならない」ミッションを背負ったのだ。
 そして、タイトルから“ヒーロー”は消えた。
 結果、大成功した。

 比べるなと言われても無理なのが、ジャック・ニコルソンとヒース・レジャーの「ジョーカー」だ。
 ヒース・ジョーカーを観てしまうと、ジャック・ジョーカーはまさしく“道化”。思い出しても同情したくなるほど古臭く感じてしまう。
 一方ヒース・レジャーは俳優としての才能をいかんなく発揮し、出力全開の仕事をしている。タイトルロール以上に見応えがあり、遺作となった今ではヒースのための映画といっても過言ではない。
 必見。

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 このアートワークもカッコイイ。

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コメント 27

u_yasu

私も、ダークナイトの意味、映画を観るまで勘違いしていました。

クリストファー・ノーラン監督、本当に凄いですよね。
今作の完成度が凄く高いので、続編って大丈夫なのかなぁ〜?と今から気になったりします。

ヒースジョーカーは、本当に強烈ですよね。
by u_yasu (2008-08-19 01:11) 

ken

トゥー・フェイスのビジュアルも見事でしたが、
ヒースがいない「ダークナイト2」なんて考えられませんね。
本当に残念です。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-08-19 01:22) 

snorita

ヒース・レジャー惜しいよね。
by snorita (2008-08-19 08:29) 

ken

惜しい。言葉がないです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-08-19 11:18) 

クリス

アメコミの枠を超えていますよね。
by クリス (2008-08-19 15:57) 

ken

ギンギンに超えてます。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-08-19 16:27) 

魚河岸おじさん

「ダークナイト」には、ボクも殺られました
たたみ掛けるクライマックスの連続
そして、悪と狂気について考えさせられる物語
本当に疲れる作品でした
by 魚河岸おじさん (2008-08-19 16:37) 

瑠璃子

すみませんちょっと指摘なんですが…。
ダークナイトは確かバットマンの代名詞的なところもあると思いますよ。なんていうか、例えば「赤い彗星」といえば「シャア」の事を指すような。(映画で言えば「赤い彗星」というタイトルでシャア映画が作られるようなものじゃないでしょうか)
アメコミ的な話で言えば、フランク・ミラーがバットマンが正義の味方完全無欠の善という存在ではなく、悪人を駆逐したくてしょうがない(復讐心とトラウマから)ある種の精神的にアレになっている人、としてリニューアルしたことが大きいですね。基本的にはこの路線にバートン・バットマンもノーランバットマンも立脚していると思います。
とかなんとか偉そうなことを行ってまだみてないんですがw
私は今週見る予定です。非常に楽しみにしています。
by 瑠璃子 (2008-08-19 17:32) 

ken

>魚河岸おじさん
 ちょっと長いかな?とも思いましたが、充分堪能しましたw
 nice!ありがとうございます。

>瑠璃子さん
 ダークナイトの件。そこまで知ってる人、あんまりいませんからw
by ken (2008-08-19 17:51) 

eklady

いつも、映画鑑賞の指針にさせていただいてます。コメントはなかなか入れられませんでしたが、この作品は久々興奮してしまいました。終わった後に興奮が残る作品は、チョット無かったように思ってました。バットマン=こうもり、正義の味方だけでないダークなところがヒーロー物だけで片付けられない作品でした。ヒースジョーカーは、鬼気迫るものがありましたね・・・他の作品のシリーズ物は生ぬるい感が否めませんが、もう一度前作を見てしまう程の作品でした。長くてすみません。これからも、作品批評期待してます
by eklady (2008-08-21 12:35) 

ken

いつもありがとうございます。
僕も「ビギンズ」見直してみようかと思っています。
もうまるで別の作品でしたもんねw
by ken (2008-08-21 18:36) 

kemukemu

「ダークナイト」、
なかなかの傑作ですね。

by kemukemu (2008-08-21 19:29) 

ken

なかなかどころじゃないですね。
皆さんの反応を見てますますそう思います。
by ken (2008-08-22 00:01) 

Labyrinth

(^_^)ノ こんばんは。
あの空間に身を置きたくて、また見に行くつもりです!
ヒースもこれが見納めだなんて、残念すぎますね。
by Labyrinth (2008-08-26 02:48) 

ken

僕の周りにもリピーターがいます。
これはやっぱり劇場で観るべきですよね~。
ヒースは残念です。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-08-26 03:09) 

coco030705

こんばんは。
「バットマン」の歴史も知ることができましたが、トヨタの話もおもしろかったです。さすがですね!
やはり、ヒース・レジャーのジョーカーは究極の悪であり、最高の演技でしたね。ご冥福をお祈りします。合掌。

by coco030705 (2008-08-28 19:52) 

ken

映画も今の時代はブランディングが大事だな、と思いました。
今後のヒーロー映画の試金石になるかも知れませんね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-08-28 19:57) 

tomoart

「ダークナイト」は重層的で深く作られている分、本当に様々な見方が出来る作品だという事が、自分が観てレビューしてから改めてみんなの感想を読んでいて思いました。ワタシ的にベストな作品ではありませんでしたが、スゴい映画である事は間違いないですね。
by tomoart (2008-08-31 03:44) 

ken

そうなんですよね。
重苦しくて嫌だという人もきっといると思います。
それを承知でこんな映画を作った人たちがスゴイなと。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-08-31 14:15) 

Yakoha

こんにちは。
私もこれ先日観ました。超面白かったですね!
私は人間ドラマと感じました・・・。
by Yakoha (2008-09-03 00:23) 

ken

バットマンはヒーローでないのなら…、まさしくヒューマンドラマですよね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-09-03 01:18) 

江戸うっどスキー

クリストファー・ノーラン監督は、この映画の為に生まれて来たのかと思いましたが、メメントという作品も撮っているんですね。凄い監督です。
ブランドの話、納得です。
by 江戸うっどスキー (2008-09-14 07:06) 

ken

そうなんです。メメントも観なきゃ!と思ってますw
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-09-14 07:39) 

satoco

私など「ダークナイト」が好評を得てなお「バットマンなのにそんなに名作なの?」と思ったくらいです。しかし良いタイトルですね。
by satoco (2009-10-01 00:27) 

ken

タイトルに「BATMAN」が残っていたら、きっとここまでの評価じゃなかった
ように思います。タイトルってホント重要ですよね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-10-04 21:17) 

カオリ

「ダークナイト」という言葉のマジック、映画でまず2重3重の意味がかかっていて、日本に持ってきて、カタカナにすると、更に2重の意味がかけられる・・・という。観てよかった!
by カオリ (2009-10-13 15:58) 

ken

おっしゃる通り、日本人にはさらに美味しいタイトルでしたね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-10-13 21:56) 

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