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見逃していたら絶対おすすめの20本~2007年版~ [2007年 ベスト20]

 2007年もまもなくお別れです。
 今年もいろんなことがありましたね。
 個人的に今年一番嬉しかったニュースは「結婚したこと」。
 一番哀しかったニュースは「旧い友人をミャンマーで亡くしたこと」でした。
 みなさんはいかがでしたか?

 さて、僕はもう年内は映画を観ることが出来ません。
 と言うのも、大晦日に生放送を抱えていて、その準備に追われているのと、番組の打ち上げで年越しするのが確定しているので今年は「大怪獣ガメラ」で打ち止め(笑)。
 結果、今年観た映画は190本ということになりました。
 そこで今年で4回目!もう「恒例」と呼んじゃっていいだろう「ベスト20」を発表します。
 190本を映画の製作国別に並べると、
  アメリカ 85本
  日本 44本
  韓国 8本
  フランス 7本
  イギリス 5本
  中国 3本
  ノルウェー、スイス、スペイン、ロシア、タイ、イタリア、各1本
  合作作品 32本
 並べてビックリしたのは香港映画が1本も入っていないこと。不調なんですねえ、香港映画界は。
 では、2007年版の「見逃していたら絶対オススメの20本」はこちらです。
 毎年断りますが、ランキングではありません。今年僕が観た順に並んでいます(笑)。
 

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ウェイトレス ~おいしい人生のつくりかた [2007年 ベスト20]

ウェイトレス ~おいしい人生のつくりかた」(2006年・アメリカ) 監督・脚本:エイドリアン・シェリー

 運がいいと年に1本、ないしは2本。
 女性監督が撮った女性が主役の秀作とめぐり合うことがあります。
 例えば、
 「死ぬまでにしたい10のこと
 「幸せになるためのイタリア語講座
 「マーサの幸せレシピ
 「女はみんな生きている
 「かもめ食堂

 いずれも男性の監督には撮れないだろう女性らしい視点と優しさとユーモアに溢れた作品でした。
 この「ウェイトレス」も、そんな一品です。
 
 タイトルのウェトレスは3人登場します。
 一人目はパイ作りの天才、ジェンナ。
 二人目は寝たきりの夫を持つベッキー。
 三人目は引っ込み思案で彼氏がいないことが悩みのドーン。
 3人は南部の田舎町にあるダイナーで働く同僚で、お互いを思いやりながら日々生きています。
 
 本編はまずこの3人芝居から始まるのですが、「3人芝居が書けてこそプロ」と言われる脚本が実によく出来ています。テンポも展開も心地良く、観客はあっという間に映画の世界観に引きずり込まれることでしょう。
 ストーリーは嫉妬深い夫アールと別れて新しい人生を夢見るジェンナを軸に展開します。
 ジェンナはいつか家を出て、隣町で開かれるパイコンテストに出場して、優勝賞金でパイ専門店を開くのが夢。そんな夢の実現に立ちはだかるのが夫のアールです。
 このアールのキャラクター設定と演じたジェレミー・シストが良かった。彼が本作品の完成度を高めていると言っても過言ではありません。
 まるで「ダース・ベイダーのテーマ」のようだったアールが鳴らすクラクション。完全否定出来そうで出来ない微妙な性格付けと台詞の数々。ジェンナと観客にとってアールは“共通の敵”となるわけで、彼の圧倒的な存在感が中だるみを一切作らずドラマを牽引して行くのです。
  
 他の登場人物もキャラクター設定は見事でした。
 自分の店で毎日小難しい注文をふっかけるオーナー。
 顔を見れば「さっさとしろ!」しか言わない店長。
 ドーンに一目惚れして店に押しかけるストーカー。
 唯一産婦人科医のDr.ポマターだけが緩かった気がするのですが、それ以外は完璧。 
 もうひとつ楽しんだのは、男の監督には描けない女性監督ならではの恋愛の展開。積極的だったり、情熱的だったり、現実的だったりする恋愛模様は見応えがありました。
 
 決してウェットな作品ではありません。
 女性は全員が溜飲を下げ、男だけが「なんで?」と思ってしまうエンディングに女性はほくそ笑んでください(笑)。
 レディースデイは満員必至の名作です。

ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた (初回生産分限定“幸せなパイのレシピブック”付)

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エディット・ピアフ ~愛の賛歌~ [2007年 ベスト20]

エディット・ピアフ ~愛の賛歌~」(2007年・フランス/イギリス/チェコ) 監督:オリヴィエ・ダアン

 僕は何の情報も持たずに映画を観るのが好きだ。

 理由は「先入観を持たずに映画を楽しみたい」だけなのだが、今回魚河岸おじさんが「ゆる会に相応しい映画」として選んだ本作を観るにあたっては、そのスタイルを変えてみてもいいか、と思っていた。
 それはこの作品が伝記映画であるからだ。
 
 エディット・ピアフは僕ですらその名前を知っているほどの世界的な有名人である。そんな人物の伝記映画の描き方は間違っても「エディット・ピアフとは何者か?」ではあるまい。まったくの無名の人物を描く作品なら予備知識は必要ないが、世界的大スターの伝記映画ならば、少なくとも広く知られる彼女の歴史だけは知っておいた方がいいだろうと思ったのだ。
 それが正しいか正しくないかは、作り手の立場に立つと良く分かる。
 「誰もが知る彼女の生涯をどう描くか」
 疑うまでもなく、これが最大のテーマだろう。
 だから僕は公式HPを開き、主だった記事はすべて読んだ上で劇場へ向かった。これは作品に対する理解力を深めるために必要な予習だったと思う。

 知ると残念に思うこともある。
 彼女の年表に名を残す著名人たちの大半がその名も姿も見せないからだ。
 ジャン・コクトー、イヴ・モンタン、シャルル・アズナブール、ジョルジュ・ムスタキ。
 しかし唯一登場するマレーネ・デートリッヒとのシーンもただのワンシーンに留めたことから想像するに、彼女の人脈を見せることが本意ではない、と判断したのだろう。適正尺にするためにもこれは重要なジャッジだったと思う。
 いずれにしても予習のせいで残念だったのはこれだけ。どちらかと言うと「予習のおかげで迷わずに済んだ」感がある。というのも本編は時系列ではなく時代を激しく交錯させた編集を施していたからだ。
 ファーストシーン。
 伝記映画だからとのんびり構えていたら、いきなり晩年のピアフが登場して驚く。そして、ここから140分後まで見事にカットバックの連続だった。
 「時系列(の伝記映画)って実は中だるみするんですよね」
 “ゆる会”に参加したクリスさんが、アフターのビアホールで言った。
 全く同感。
 ピアフの歴史を知る圧倒的多数の観客を飽きさせないためには、このスタイル以外に方法はなかっただろう。ただし、幼少時代の主なエピソードを紡いだあとの後半、療養中のピアフを登場させた辺りから、幾分カットバックし過ぎたんじゃないかと思う。多くの観客はピアフの行く末を知っているし、たとえ知らなかったとしても想像のつく範疇にまで到達しているわけだから、後半は時系列に戻してスムーズにゴールを目指す方法もあっただろう。

 しかし、本作にはそういった細かい注文を相殺してしまう“絶対的存在”がいる。
 ピアフを演じた女優、マリオン・コティヤールだ。
 僕がピアフのことを良く知らないという幸運はあったにしても、マリオン・コティヤールの演技は似ているとか似ていないの次元を完全に超えていたと思う。少なくとも僕にとって彼女はエディット・ピアフそのもので、時折見せるあまりに見事な“演技”が「そうだ。彼女は役者なのだ」と再認識させた。
 “壮絶”なピアフの生涯を演じたコティヤールは“圧巻”だった。

 その“壮絶”と“圧巻”が凝縮されたシーンがある。
 生涯最も愛したとされる恋人のプロボクサー、マルセル・セルダンが亡くなったと知らされるシーン。
 アメリカ公演中だったピアフは、その夜もニューヨークの「ヴェルサイユ」で歌っていたという記録があり、監督のオリヴィエ・ダアンはこれをワンカットに収めようとした。それに応えるべくプロダクションデザインのオリヴィエ・ラウーはアイディア賞モノのセット図面を引き、カメラマンの永田鉄男は抜群のカメラワークを発揮し、そしてマリオン・コティヤールはもはや“神がかり的”としか言いようの無い演技を披露した。こうしてピアフの劇的な一夜は見事ワンカットに収められた。
 「あのシーンだけでもこの映画を観た甲斐がありましたよ」
 とビールジョッキを手に魚河岸おじさんは、2度同じことを言った。

 ラストも意外な締めくくりだった。
 気持ちいいくらい、まったく引きずらないエンディングだったのだ。ビアホールで僕がそう言うと、
 「そう、私もあそこはイイと思ったのよ!」
 とちょっと高い声をミックさんが上げた。

 エピソードが断片的で箇条書きだとか、ピアフの生涯を語る上で避けては通れないはずの人が出てこないとか、脚本を悪く言う人もいるようですけど、僕はそう思いません。近年の伝記映画の中では実に良く出来た秀作だと確信しています。
 この映画をきっかけにしてピアフの生涯に興味を持った人たち、あるいは再び振り返ってみたい人たちが、さらに復習をすればそれでいいのです。
 見どころ満載、鳥肌必至の傑作。

エディット・ピアフ~愛の讃歌~ (2枚組)

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  • 出版社/メーカー: 東宝
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ヘアスプレー [2007年 ベスト20]

ヘアスプレー」(2007年・アメリカ) 監督:アダム・シャンクマン

 「プロデューサーズ」以来のノー天気なミュージカルにして「シカゴ」以来の面白さ。
 「RENT」を観たときに、「ここまで間口の広いミュージカルも今まで観たことが無かったように思う」と書いたのだけれど、「ヘアスプレー」は「グリース」並みにハードルの低いところが魅力的だ。
 ミュージカルに興味が無くても、あるいはミュージカルは受け付けないという人も、この作品だけは観ていられるんじゃないかと思う。その理由は、曲がイイ、俳優陣がイイ、そして一番肝心、ストーリーが気持ちイイからだ。

 ドラマは60年代初頭。白人至上主義が色濃いボルティモアで「人種差別撤廃」の意識が広がっていく様を描いている。
 と言っても決して重苦しいストーリーではない。ヘアスプレー会社が提供するボルチモアのローカル番組「コーニー・コリンズ・ショー」を軸にして、“ダンス”と“恋愛”と“人種差別の壁”の三要素がほぼ同じウェイトで展開していく。
 これまで人種差別を描くときは問題の性格上、白人優位で描かれることがほとんどだった。しかし本作は、ミュージカル映画であることを最大限利用して黒人のスタンスを、やがて世界中を席巻するブラックミュージックに置き換え、“時代の流れに乗る人々”としたところが大きい。さらに一切の暴力が無い点も特筆に価する。白人と黒人はまったく対等に描かれ、おかげで黒人を応援する白人たちが偽善者っぽく写らないのは秀逸だ。
 そんな細かい配慮のおかげで、一歩間違えば暗くなりがちなドラマを明るく爽やかなものに仕立て上げたジョン・ウォーターズ(1988年オリジナル版の脚本家)の手腕は大いに評価されるべきだろう。

 さて本作はテーマ以外にも見どころは満載。
 まずはトラボルタ。
 僕は「なぜこのキャスティング?」と終始考えていたのだけれど、これはオリジナル版(1988年)、ブロードウェイ版(2002年)から続く「エドナ役は男性俳優が演じる」という伝統に則ったものらしい。「グリース」のあと「ステイン・アライブ」で大コケした痛手を負っていたのか、ミュージカルへの出演を固辞していたトラボルタ(ちなみに「シカゴ」でリチャード・ギアが演じたビリー・フリン役をトラボルタは3度オファーを受けて3度とも断ったらしい)を、プロデューサーのクレイグ・ゼイダンが1年がかりで口説いたのだという。
 が、個人的にはこのキャスティング、失敗だったと思っている。というのも、客寄せ以外にトラボルタを起用した理由が見つからなかったからだ。
 もうひとつの伝統だという「トレーシー役は新人を起用すること」は見事にハマったと思う。
 ロングアイランドのアイスクリーム屋でアルバイトしていたニッキー・ブロンスキーの「シロウトっぽさ」はこの作品最大の見どころ。彼女の歌とダンスはとにかくカワイイ。
 「ハイスクール・ミュージカル」の主役に抜擢され、アメリカではアイドル的な存在となっているザック・エフロンもいい。20年前のマイケル・J・フォックスをイメージさせる端正なマスクの少年は、60年代の“R&R
スターもどき”を気負うことなく演じていて、彼のおかげで違和感無く60年代の物語を楽しむことが出来る。

 さらにバイプレイヤーたちの力も大きい。
 敵役を演じたミシェル・ファイファーの息を呑む美しさとコメディエンヌぶり。完全に脇に回ったクリストファー・ウォーケンの存在感。「シカゴ」のママ・モートン役で世界中に認知されたクイーン・ラティファの貫禄などなど、新人と共倒れできないプロデューサーが掛けた“保険”はすべて効いたと言っていいだろう。
 しかし、本作で一番の拾い物は「X-MEN」でサングラスかけっぱなしのミュータント、サイクロプスを演じたジェームズ・マースデンだ。彼が人気テレビ番組のホスト、コーリー・コリンズを演じているのだが、番組で披露する歌と司会っぷりが実に素晴らしい。特に歌はあまりに巧いので吹き替えじゃないかと疑ったが、オリジナルサウンドトラックにはきちんと名前がクレジットされていたので本物と信じよう。と同時に「新しいミュージカルスターの誕生」と言っていいんじゃないだろうか?
 ついでなので書いちゃうけど、トレーシーの親友ペニーを演じたアマンダ・バインズも良かった。昔のナンシー・アレンを髣髴とさせる可愛らしさ!ヘアメイクで女の子を変貌させるネタは普遍的でいつ観ても楽しい。

 というわけで、トラボルタのキャスティング以外は言うこと無しの娯楽ミュージカルです。
 ぜひ劇場で多くの人たちと一緒に楽しんでください。

ヘアスプレー DTSスペシャル★エディション (初回限定生産2枚組)

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  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
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あるいは裏切りという名の犬 [2007年 ベスト20]

あるいは裏切りという名の犬」(2004年・フランス) 監督:オリヴィエ・マルシャル

 まずこの邦題に100点。まだ9月ですけど今年の邦題ベスト1を宣言します。
 元警察官の監督と、同じく元刑事のドミニク・ロワゾーが共同で脚本を執筆し、ロワゾーが経験した事件と実在の人物をヒントにしながら書き上げたオリジナル・ストーリーだそうです。

 タイトルから想像できる通りフィルム・ノワール(退廃的かつ悲観的な犯罪映画)の典型とも言うべき作品で、リュック・ベッソンが幅を利かせるもんだからすっかり面白くなくなってたフランス映画界から出た久しぶりの佳作。
 ただしこの作品を楽しむためには注意すべき点があります。

 「人の名前をちゃんと覚えておきましょう」
 
 はい。この手の作品の鉄則中の鉄則ですね(笑)。
 チクリ、密告、悪巧み。この類の会話はだいたいにおいてターゲットがいないところでなされますから、「それって誰のハナシしてんだっけ?」ってことになったらもう完全にアウトです。
 そしてもうひとつ。映画に不要なカットなんてひとつもありません。

 「間違っても“ながら見”はやめましょう」

 そんなことしてると重要な伏線を見落とす可能性があります。

 内容については、ときどき「インファナル・アフェア」を引き合いに出して本作の記事を書いている人がいますが、この2作を比較してしまうのは危険です。
 あのドラマは香港の優秀なクリエイターが編み出した一級のエンタテイメントで、とても分かりやすい構造と映像になっていますが、本作はかなり「捻り」が効いていてノワールならではのカタルシスがエンディングで爆発するかと言うと、実はそうでもないんですね。だから「もうちょっとスカッと終わってくれてもいいだろう」と言う感想を持つ人も少なからずいると思います。
 僕自身も「どうやって観客の溜飲を下げるつもりなんだろう?」と思いながら観ていましたが、かなり意外なところにオチがあって、ちょっとしたサプライズではありました。

 フランスを代表する名優、ダニエル・オートゥイユとジェラール・ドパルデューが最高にカッコイイです。安定感のある俳優がこういった映画に出てくれると作品自体の重みが増してイイね。
 これもハリウッドがリメイクするそうです。やめてくれ~。

 邦題100点。
 キャスティング95点(ヴリングスの妻カミーユだけがイマイチでマイナス5点)。
 脚本80点(ヴリングスが自らを追い込んでしまう事件の顛末が「どうなの?」って感じ)。
 上映時間(110分)100点。
 男子にはオススメ。女子は寝ちゃうかも(笑)。

あるいは裏切りという名の犬 DTSスペシャル・エディション

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  • 出版社/メーカー: アスミック
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RENT/レント [2007年 ベスト20]

RENT/レント」(2005年・米) 監督:クリス・コロンバス 原作・作詞作曲:ジョナサン・ラーソン

 食わず嫌いだった自分が恥ずかしい。
 これは圧倒的な愛とパワーに満ちた人間賛歌ミュージカルだった。
 オリジナルはピューリッツァ賞を受賞したブロードウェイミュージカル。
 舞台は80年代末のニューヨークで、家賃(レント)も払えない若者がドラッグやAIDSといった問題を抱えながらも、ひたむきに生きる姿を描いている。

 ミュージカルで一番大切なのは(ここで何度も書いてきたけれど)“つかみ”だと思う。
 「RENT」のオープニングもよく出来ていた。
 主要登場人物8人がステージ上に整列して歌う「Seasons Of Love」は文句なしに聴き応えのあるゴスペル。続く「Rent」は爽快なロックンロール。この“10分”は実に素晴らしい。
 もしもあなたがこの10分で何も感じなかったら、この続きは観なくてもいい。あなたは迷わずリモコンの「停止ボタン」を押し、そして未来永劫「ミュージカル」と名の付く総てのモノを観なくていい。

 それにしても、ここまで間口の広いミュージカルも今まで観たことが無かったように思う。
 僕はこの作品、「ミュージカル入門の一篇」としても優れていると思うのだけれど、敷居を低くしている最大の要因はさまざまなジャンルの音楽を扱っているところだ。
 ロック、バラッド、タンゴ、ゴスペル、チャチャ、ポップ、R&B、フォーク、ディスコ…。そもそも「RENT」はプッチーニのオペラ「ラ・ボエム」を現代のニューヨーク・イーストビレッジに置き換えるという発想から、ジョナサン・ラーソンが書き上げたミュージカルなのだそうだ。
 人種的にも宗教的にも性的にも多様な(マイノリティ寄りということでもあるが)キャラクターを生み出すことにより、あらゆる音楽を包括出来る構造にしたことが「RENT」
成功の第一歩だったと言えるだろう。

 感動的なエンディングを迎えると、再びオープニングの「Seasons Of Love」を聴きたくなる。
 何度観ても秀逸なオープニング。
 ところがこれはブロードウェイ版のオープニングとは異なるらしい。
 映画オリジナルの演出を施したクリス・コロンバスにも拍手だ。

 ミュージカルファン必見の一作。

レント

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  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2007/06/22
  • メディア: DVD

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シッコ [2007年 ベスト20]

シッコ」(2007年・アメリカ) 監督・脚本・製作:マイケル・ムーア

 ヤバイ。これは相当おもしろいです。
 アメリカ医療制度の大いなる矛盾を追求した本作は、実は「華氏911」以前に着手していたのだそうだ。
 しかし、ブッシュがイラク戦争をおっぱじめたのを受けて、ムーアは「シッコ」プロジェクトを一旦中断。急遽「華氏911」を製作したのだと言う。
 でも、結果的にはこれが大正解。
 理由は観れば分かる。
 アメリカの医療制度は、グラウンド・ゼロで働いたアメリカの英雄たちをも切り捨てる“悪魔のシステム”であることをアピールすることが出来たからだ。
 「グアンタナモに収監されたテロリストが万全の医療を無償で受けられるのに、気管支炎などの後遺症に悩むボランティアスタッフたちは高額の医療費を自己負担しなければならない」、という比較はいささか強引だが、これを受けて起こす行動はムーアのクリエーティビティの賜物。しかも否応にもへビーになるエピソードを巧みな編集によってひとまず笑いに転換し、観客の気持ちの負担を軽くさせる
あたりはさすがだ。
 
 …と、ここで語るべきはやはり映画のテクニカルな部分ではない。

 僕たちは先進国で唯一、国民皆保険が存在しないアメリカの信じられない実情を目の当たりにしつつ、同時に日本で昨年成立した「医療改革法」によって、日本の医療制度がどう変わろうとしているのかを考えたほうがいい。
 僕は
この映画を大いに笑い飛ばした。
 でも最後まで笑っていたわけじゃない。
 文字通り「笑っていられない」現実がそこにあったからだ。
 人の命を救わないことで企業の利益が上がる。
 ありえない。
 でもアメリカで起きていることが、近い将来日本でも起きたらどんなことになるのだろう。
 考えるだけで空恐ろしい。
 だから、アメリカの医療制度に興味があろうと無かろうと、この作品はゼッタイに観たほうがいい。
 観たら、間違いなく日本の医療制度に興味が沸くはずだ。
 僕は、日本は「国が国民を恐れる国」にならなきゃいけない、と思った。
 Take Action! 7.21

シッコ

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  • 出版社/メーカー: ギャガ・コミュニケーションズ
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ヒトラー ~最期の12日間~ [2007年 ベスト20]

ヒトラー ~最期の12日間~」(2004年・ドイツ/イタリア) 監督:オリバー・ヒルシュビーゲル

 子供には難しいけど、大人には面白い作品だと思います。いや正直、ホントに意外と面白かった。
 僕自身今日まで、このDVDを手にとっては「やっぱりやめとこう」ってことが何度もありました。
 観なかった理由はまず本編の尺。
 155分もあるんです。観る前からグッタリです。
 それと世間の評判。
 「どうにも暗い」とか「絶望的」とかネガティブな批判をいくつか聞いてしまって、どっちにしても娯楽作品じゃないし、しかもここ数年戦争映画には引き気味だったし、「じゃあ観なくてもいいかあ」ってテンションだったワケです。もちろん今となっては「もっと早く観ておけば良かった」と思ってますけど。

 面白かったポイントはいくつかあります。
 まずはヒトラーの私設秘書の目線で綴られたドラマだったこと。
 原作はヒトラー最期の3年間に私設秘書を務めたトラウドゥル・ユンゲの自伝がベースになっていて、女性が主役ですからドンパチばかりじゃないのが良かった。
 戦後初めてドイツ人がヒトラーを演じ、戦後初めてドイツ人がヒトラーの映画を作ったという点においても観るべき価値があると思います。
 ブルーノ・ガンツがとにかく凄い。部下を怒鳴り散らすシーンなんか、完全にヒトラーが乗り移ってるとしか思えません。良い意味で狂ってます(笑)。

 細かい点を挙げると、あくまでもドイツ側の視点に立ったカメラ位置にも感心しました。
 たとえば、ソ連軍の砲撃は延々と続くものの、本編後半まで敵の姿は一切ありません。
 ソ連軍の歩兵がベルリンへ侵攻して来るまで敵軍の映像を差し込まないという演出は、ただ黙って攻め込まれるのを待つだけとなったヒトラーとその周辺の心理状態を見事に表現していたと思います。それはまさに“一人相撲”。ヒトラーの慌てっぷりが良く出ていました。
 
 本編で僕が一番感心したのは、ヒトラーの最期が本編のラストではないと言う点。
 邦題こそ「ヒトラー最期の12日間」ですが、原題は「没落」。つまりこの作品は「ナチスの終焉」を描いたわけで、どちらかと言えば、ヒトラー自殺後の展開が面白かった。
 歴史の教科書レベルだと「ヒトラーの自殺」イコール「ドイツ軍の降伏」なんですが、実際は(当たり前だけど)そうじゃなかったと認識できただけでも、この作品を観た価値がありました。

 と言うわけで僕は、この映画を中学生以上の人たちにオススメするのですが、観る前にひとつだけ勉強をしておいて欲しい人物がいます。
 
 ゾフィー・ショル(1921-1943/Sophia Magdalena Scholl)
 
 彼女は“白バラ抵抗運動”と呼ばれる反ナチス運動の主要メンバーの一人で、国家反逆罪によりわずか21歳でギロチンにかけられた女性です(詳しくは映画を観る前に、ご自身で調べてみて下さい)。
 この人のことを知った上で本編を観ると感動の度合いが違います。



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ヒロシマナガサキ [2007年 ベスト20]

ヒロシマナガサキ」(2007年・アメリカ) 監督・製作・編集:スティーブン・オカザキ

 「衝撃」の一言。
 原爆をテーマ作られたドキュメンタリーはこれまでも沢山あった。
 しかし、
 
この作品(原題:White Light/Black Rain)ほどショッキングな作品はなかったと思う。
 目を覆いたくなる過去。
 目を疑いたくなる現実。
 観た者は間違いなく言葉を失うだろう。
 そして、戦争がいかに愚かな行為であるかを(改めて、ではなく)初めて思い知るのだ。
 今まで僕の中にあった「反戦」は、人に教えられて口にしていた「反戦」でしかなかった。
 それほどショックだった。
 
 「衝撃」の所以を明らかにしておこうと思う。

 本編は被爆者14人のインタビューを中心に構成されている。
 この構成は今までも多く観てきた。
 驚かされるのは、老いた14人のうち何人かの被爆直後の映像があることだ。
 焼け爛れた皮膚をさらして治療を受ける少年。
 ごっそりと髪の抜け落ちた頭をさらす少女。
 文字にすることすら躊躇してしまう映像が中盤紹介される。
 その少年少女たちは生き永らえて、我々の目の前で苦悩の60年を語る。
 傷ついた肉体を晒しながら。
 何人かがこう言う。
 「昨日のことのように思い出せます」
 
 原爆。

 未曾有の悲劇は、人類が目撃した最大の閃光と5,000度の熱によって刻印された。
 そのデータは何物にも勝るハードウェアである“人間の五感”に記録された。
 だからその記憶は、記録されたままの姿で、脳裏に表示されるのだ。
 そして今。
 ハードウェアの多くは耐久年数を超えようとしている。
 忘れたくても忘れられなかった記憶が、被爆者の寿命と共に失われようとしている。
 失ってはいけない。
 絶対に失ってはいけない記憶を、今バックアップしておくために本作は生まれたのだ。
 本作が世に出る意義はあまりに大きい。
 これは世界中のすべての人が観ておくべき作品だと断言する。
 世界で唯一の被爆国の、世界で最悪の悲劇が、ここに記録されているからだ。

 そして、2007年8月6日。
 この作品はHBO(全米3,800万人が加入している大手ケーブルテレビ局)にて全米放送される。
 その反応やいかに。

 日本では7月28日(土)から、岩波ホールほか全国でロードショー公開となります。
 必見です。

ヒロシマナガサキ

ヒロシマナガサキ

  • 出版社/メーカー: マクザム
  • メディア: DVD

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選挙 [2007年 ベスト20]

選挙」(2006年・日本) 監督・撮影・編集:想田和弘

 時は2005年。郵政民営化を旗印に政治改革を推し進める小泉劇場真っ盛りの年。
 東京で切手コイン商を営む40歳の男性が、突如自民党の落下傘候補となって川崎市議会補欠選挙に出馬することになった。
 男の名前は山内和彦。
 これは「電柱にも頭を下げろ!」とまで言われる壮絶な“どぶ板選挙”に密着した
ドキュメンタリー。

 珍しいことに本編にはナレーションもテロップも一切挿入されていない。そのせいで説明不足な感じは否めず、僕は「映画としての完成度は高くない」と思った。
 しかし監督はこれを「ドキュメンタリーにはメッセージ性が必要とする固定概念に抵抗するための手法」と言い、本作については「観察映画」と表現した。つまり観客はこの映画を観察して何かを感じ、考え、解釈すれば良いということらしい。この言い訳はともかく、「足りないものは足りない」と僕は思うのだけれど、内容自体はとびっきり面白かった。
 なんといっても、戦後のほとんどを支配してきた自民党の政治とはどういうものか、その一端を確実に目撃することが出来るからだ。そして「選挙で勝つ」と言うことはどういうことかを知ることになる。
 例えば「造反」
 この言葉は映画を観る前と後では大きく印象を変える。当時、郵政民営化法案に反対した造反議員に対する自民党の処遇が、正当なのか不当なのか僕にはまったく分からなかった。けれど本作を観たあとでは「正当」と言わざるを得ないほど政治の世界はタテ社会であることがよく分かる。つまり造反とは「義理を欠いた行為」以外の何物でもなく、ヤクザの世界ならエンコ詰めたくらいじゃ済まないハナシだったのだ。

 妻の存在。
 政治の世界に「妻」という言葉は存在しないらしい。紹介するときは「ワタシの家内です」と言い、自己紹介のときは「山内和彦の家内でございます」と言う。その理由は劇中の人は誰も知らなかった。知らないところがまた面白い。これは「どぶ板選挙」が自民党内でマニュアル化されている証でもあるからだ。
 そんな中に突然放り込まれた“家内”さゆりさんの様子もまた面白い。
 政治の世界に足を踏み入れ、次第に熱の上がっていく夫の傍で「生活者」としての姿勢を崩せない妻。完全なる男社会に対して時に嫌悪感を抱き、選挙でメシを食う“選挙屋”連中の言葉に怒りを覚え、現実問題として負けたときの心配をする。本編中では一番観客に近いスタンスの彼女の存在が、観客には縁遠い「選挙戦」を身近に感じさせてくれる。

 繰り返すけれど映像作品としてのクオリティは高くない。しかし「観察映画」というスタイルは成功していると思う。僕もまんまとその術中にはまったようだ。
 個人的には、「神輿」を担がれた男が、票獲得のために「御神輿」を担ぐシーンが意味深でとても好きだ。
 
 この作品は「主人公が魅力的」という圧倒的なアドバンテージを持ち、しかも誰もが知る選挙の誰も観たことのない舞台裏でカメラを回せた段階で「勝ったも同然」だったかも知れない。
 「A」以来の傑作ドキュメンタリー。

選挙

選挙

  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • メディア: DVD

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