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シン・ゴジラ(2016年・日本) [2016年 レビュー]

総監督・脚本:庵野秀明
監督:樋口真嗣

 4DX2D版というヘンなバージョンを見た。2Dだけど椅子が動いたりするヤツだ。煙も水も香りも出る。公開まもなく「石原さとみのいい匂いがした!」とコーフン気味の書き込みもあったが、それはまあ思い込みってヤツだろう。僕自身は睡眠不足が続く最中に観に行ったので、椅子が動いてくれれば寝ずに済むだろうという読みだった。ついでに眠気覚ましのホットコーヒーを買って着席したら、これが割と早い段階からガタガタ揺れる。なので、しばらくは熱々のコーヒーを手に観る羽目に。おかげで全然落ち着けないのだが、逆にこれはこれで良かったかも知れない。なんだか「映画を見ている」というよりも、目の前の災害に“あちゃあちゃする”気分を味わえたからだ。いや、本当だったらもちろんコーヒーを気にするどころじゃないんだけど。

 日本版としては12年ぶりの復活である。
 渡辺謙さんが出た2014年のハリウッド版にがっかりしたこともあり、庵野秀明と樋口真嗣が『ゴジラ』をやると聞いたときには心底期待した。そして結果、大満足だった。

 2014年に1作目の『ゴジラ』(1954)を観たとき、僕は「『ゴジラ』を作れるのは日本人だけなのだ」と書いた。それは『ゴジラ』が反米、反戦、反核映画だったからだ。ハリウッドは彼らが「GODZILLA」と呼ぶキャラクターを自らの手で操りたかった。ただそれだけだった。だから日本人には面白くないのだ。
 『シン・ゴジラ』は、唯一の被爆国で福島第一原発という“核爆弾”を抱える日本だからこそ作れる作品で、かつ日本人のために作られた映画だ。ネット上では海外での評価を気にする文章も散見されたが、正直言って海外の評価なんかどうでもいい。僕が本作に満足したのは、ハリウッド版2作品に対する不満と、ゴジラの新たな価値観を構築できないまま失速した「ミレニアムシリーズ」に対する不満の両方を、庵野秀明と樋口真嗣の2人が見事に吹き飛ばしてくれたからである。それはあまりに晴れやかで爽快感を覚えるほどだった。

 危機管理対策映画である。
 もっと単純に、会議映画でもいい。正直こんなゴジラ映画になるとは思っていなかった。いやエキストラに参加した知人から、その雰囲気だけは事前に聞いてはいたけれど、ゴジラの出番がここまで少ないとは思ってもみなかった。
 その昔、ある有名映画俳優のマネージメントをしていた大先輩にこう聞いたことがある。
 「主役は出番が少ないほどいい。皆がもっと観たいと思うから何度も観に来る」
 映画産業全盛期の話だ。確かに劇場を出た足でもう一度観たいと思った。それはゴジラの姿だけでなく、ゴジラと会議室で戦う日本人の姿も。ゴジラは現実にいて欲しくない。しかしゴジラと闘う彼らはいて欲しい。

 『シン・ゴジラ』は良い夢と悪い夢が織り混ざった秀作だった。


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スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015年・アメリカ) [2016年 レビュー]

原題:STAR WARS:THE FORCE AWAKENS
監督:J.J.エイブラムス
脚本:ローレンス・カスダン、J.J.エイブラムス、マイケル・アーント

 これを書くまでに5回見てきた。
 3D字幕版、4DX3D字幕版、2D吹き替え版、3D字幕版(2度目)、最後はデルタ航空の機内で。
 何度見ても「エピソード7」という新作を観ることが出来た喜びが大きくて、それ以上のことをあれこれ言う気になれない。唯一、敵役であるカイロ・レンが、ダース・ベイダーと比べ物にならないくらい“小粒”だったこと以外は。

 感動的だったポイントをいくつか挙げてみる。
 映画会社がディズニー・スタジオに変わってしまったので、20世紀フォックスのオープニングが聴けなかったのは残念だったけど、買収された「ルーカスフィルム」のクレジットロゴが出たのは嬉しかった。『スター・ウォーズ』が未来永劫続くなら、未来永劫ルーカスフィルムの名は残して欲しい。これは彼のクリエイティブなのだから。
 主人公が男子から女子に代わったのも、製作がプライベート(ルーカス)からメジャー(ディズニー)に代わったためと思われる。かなり高いところに設定されたと聞く興行収入目標を達成するためには、放っておいても観に来る(僕のような)オールドファンはさておき、過去作品を観ていない若い世代の、さらに女性を取り込めないと不可能だからだ。スピンオフ作品『ローグ・ワン』の主人公が女性なのも、主要登場人物に香港の俳優ドニー・イェンが起用されたのも、マーケットを意識したものに他ならない。とはいえ『フォースの覚醒』は女性が主人公であることに何の不満も、何の見劣りもない構造に仕立てられていた。レイを演じたデイジー・リドリーはとても魅力的で、新しい時代の“エピソード”を語るに足る素晴らしいキャラクターだったと思う。
 予告編で既出だったミレニアム・ファルコン、特にハン・ソロ&チューバッカの登場シーンは感無量。15歳で見た『スター・ウォーズ』の、もう無いと思っていた新作を、53歳にして見ることが出来た喜びは、ここがピークだったと思う。思わず「生きてるだけで丸儲け」とつぶやいた。
 ストーリー展開については、様々な意見があるだろう。よく言えば「エピソード4に対するオマージュ」であり、悪く言えば「焼き直し」だ。この点については言及しない。個人的には「歴史は繰り返す、ってことだな」と思いながら途中まで観ていたけれど、後半は「ちょっと寄せすぎじゃないか?」とも思った。しかし(仮にもクリエイターの端くれなので)じゃあ自分ならどう紡ぐかと自問すると、「これで良かったでしょう」と思う。『スター・ウォーズ』の物語を自分で考えるなんてそもそもが畏れ多い。ただただ作ってもらって観せてもらえるだけでありがたい。

 一番の驚きはルークの登場だった。
 それは「今回は出ない可能性があるかも」と思っていたからだ。それが出た。しかも見事な老けっぷり。ルークの顔は自分を見るようだった。僕も老けた。ついでに「そこでどうやって暮らしてまんの!」とツッコミを入れた。生活感たっぷりだったヨーダ老師とはエラい違いだ。そういう意味では「エピソード5」も含んでたな。
 マーク・ハミルはいい表情をしていた。次回作に十分期待をもたせてくれるシーンだった。そして最後に言いたい。とてつもないプレッシャーの中、素晴らしい新作を作ってくれたJ.J.に「おつかれさまでした!」


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ヤクザと憲法(2015年・日本) [2016年 レビュー]

監督:圡方宏史
プロデューサー:阿武野勝彦

 レビュー以前にまず「テレビの限界を映画で越えようとする東海テレビの姿勢に拍手」と書こうと思い、念のために「これって地上波で放送してないよな」と確認をしたら、きっちりテレビでもOAしてた!いやいやいや逆にスゴすぎるやん!東海テレビ!!

 僕もテレビ番組のプロデューサーを生業としているので、ヤクザの事務所に入り込んでカメラを回していると聞いただけで感心した。次に「どういう交渉をして実現したのか」が気になった。だってヤクザが何のメリットもなしに面倒なテレビ局の取材など受け入れるはずないからだ。実際、東海テレビは多くの組に断られたという。ところが二代目東組二代目清勇会の会長だけが、“ある理由”から取材を引き受けた。その理由は観れば分かる。実は取材する側もされる側もWinWinだったのだ。
 WinWinなんだけど監督の圡方は冒頭でちょっとだけドヤ顔をする。実際に顔を見せるわけではない。「取材の条件」というテロップを出してヤクザを口説き落とした自分たちの仕事を自慢するのである。その条件とはこうだ。
 「取材謝礼金は支払わない」
 「収録テープ等を放送前に見せない」
 「顔のモザイクは原則なし」
 これは「私らは交渉の末に真正面からヤクザを取材させてもらってますけど何か」というアピールなのだ。しかしテレビで放映するためにはこれくらいのエクスキューズは必要だっただろう。
 一方で取材を受けることに決めた二代目東組二代目清勇会の会長にとっても、周囲に対するエクスキューズは必要だったはずだ。それが「暴力団対策法が施行され、槍玉に挙げられている側から、真っ当な発言をする機会を得る」ことだった。

 かつて『A』というドキュメンタリーがあった。やはりテレビ出身の森達也がオウム真理教の中に入り込み、オウム信者の側から一連の騒動を見つめた秀作である。本作も『A』と同じで「立場が変われば見方が変わる」ことを我々に教えてくれる。
 僕は反社会勢力を肯定はしない。しかしだからといって反社会勢力に属する人たちとその家族の「憲法で保障された基本的人権」を無視していいとは思わない。いや、この作品を観て初めてそう思った。ヤクザになった人たちは、犯罪を犯したくてヤクザになったわけではない。誰かに認めて欲しくて、あるいは自分を救ってくれた人の恩に応えたくて、あるいは何を為すべきか分からなくてヤクザになっているのだ。どうだろう。一人の人間としてごく普通の願いや想いや悩みに聞こえないか。

 このジャンル。テレビにとってタブーと言われているが、実はヤクザと向き合うことの面倒臭さが先に立って、テレビマンの誰も向き合おうとしなくなっただけなんだと思う。もちろん視聴者からのクレームも気になる。本作のような描き方の場合「東海テレビはヤクザの肩を持つのか」と言いがかりをつけられることも十分に考えられたはずだし、実際にあったのではないかと推察する。しかしそれよりも「伝えるべきこと、改めて考えるべきこと」があるんじゃないか?と腹をくくった東海テレビのスタッフには改めて敬意を表したい。
 欲を言えば、「部屋住み」と称されるヤクザ見習いの男の子に「なぜヤクザになりたいと思ったのか」は聞いて欲しかった。
 それでも歴史に残るドキュメンタリーであることに変わりはない。必見。

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007/スペクター(2015年・イギリス/アメリカ) [2016年 レビュー]

原題:SPECTRE
監督:サム・メンデス
脚本:ジョン・ローガン、ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、ジェズ・バターワース

 結論から言うと、これがダニエル・クレイグ最後の主演作ならまあ良しとする。でももしそうでないのなら期待はずれ。つまり007映画としては面白くなかったということ。誰か「シリーズ最高傑作」とか言ってなかったか?

 本作を観ていて、僕が「007映画に求めていたもの」が何だったのかよく分かった。それは『ゴルゴ13』のようなジャーナリスティック性だ。コミックと映画とではかかる制作日数が違い過ぎるため『ゴルゴ13』のようなスピーディーな対応を求めるのは酷なのだが、それにしても“アストンマーチンを乗り回すダンディーなスパイ”というもはや劇画の世界でも成立しないような「大きな嘘」を観客に呑み込ませるためには、「現実に007がいたら面白いに違いない」と思わせるリアルな設定が不可欠だと思う。そういう意味では『ミッション:インポッシブル』も同じなんだけど。

 とはいえ、永らく封印されていた「スペクター」名称の復活を聞いたときは、何だかちょっとした期待するものがあった。それは「真白なシャム猫を抱いた謎の首領」という、これまた60年代だからこそ成立していたキャラクターをどうやって現代に蘇らせるのか、サム・メンデスの手腕に対する期待だ。勝手な想像ではあるけれど、「スペクター」を復活させた理由を僕は、前作でジュディ・デンチを殺すという強烈なカンフル剤を打ち、マンネリに陥るより先に手を打った製作陣の決意の表れ、と解釈したから。冷戦後の007映画を支えた“功労者”を亡き者にしたからには、当然「ダニエル・ボンド第2章」を見せてくれるんだろうな、というちょっとした逆恨みもあった(だってジュディ・デンチのMが本当に好きだったし)。しかし本作は、僕の期待に応えてくれるものではなかったというわけだ。
 設定もそうだが、一番残念だったのはアカデミー賞俳優クリストフ・ヴァルツを使いこなせていなかったこと。『イングロリアス・バスターズ』での悪役ぶりが天才的だったからこそ、本作でも期待をしたのだが、いかんせん脚本が良くなかった。だいたいボンドとの関係性と恨みの動機がなってない。ダニエル・ボンドシリーズ中一番ガッカリしたポイントだったかも知れない。

 そうはいっても見せ場は沢山あった。個人的に気に入っているのはモニカ・ベルリッチである。50歳を超えたボンド映画マニアにはどストライクな展開ではなかったか。列車内の格闘が一種の吊り橋効果となってコーフンしてしまった若い女医より、裏社会に生きる夫を失いメンタルの箍(たが)が外れた熟女を抱くボンドにこそリアリティ感じるのである。エロさで言えばレア・セドゥのそれはモニカ・ベルリッチの足元にも及ばなかった。

 しかし、もう済んだことである。
 ラストシーンはダニエル・ボンドの最終回を思わせたが、果たしてどうなることやら。


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007/スカイフォール(2012年・イギリス/アメリカ) [2016年 レビュー]

原題:SKYFALL
監督:サム・メンデス
脚本:ニール・パーヴィス、ローバト・ウェイド、ジョン・ローガン

 『スペクター』の予習も含めて観る。一昨年以来2度目。
 シリーズ23作目は、これまでにも何度かあった極めて重要な“節目”の1本だった。

 NATOが世界中に送り込んでいるスパイの情報が入ったハードディスクが何者かに盗まれた。007(ダニエル・クレイグ)がその奪還に当たるが、指揮をしたMの判断ミスによって007は死亡。敵のエージェントも取り逃がしてしまう。組織内で立場を危うくしていくM。やがてスパイの個人情報がネット上に流出すると、一部のエージェントが拘束され処刑されてしまう…。

 僕の中で007映画は「敵の野望のスケールとそのリアリティ」によって良し悪しが決まってきた。
 たとえば『ロシアより愛をこめて』(1963)の敵は、犯罪組織としてスケールが小さくて最低だったし、『サンダーボール作戦』(1965)の敵はまさに「スペクター」なのだが、組織のワールドワイドな企みが馬鹿丁寧に説明されているおかげでかなり楽しめたし、『リビング・デイライツ』(1987)になるとソ連KGB内部の権力闘争やアフガニスタン侵攻など当時の国際情勢が反映された設定になっていて、シリアスな007を楽しむことが出来た。
 では『スカイフォール』はどうなのか。

 正直いうと敵組織のスケールは小さい。007ではありがちな「狂信的な個人」が率いる犯罪集団に過ぎない。だから007映画のスケール感もミニマムに近いのだが、今回に限って僕はこれを否定しない。なぜなら本作の主人公は007ではなく、M・ジュディ・デンチだからである。僕は彼女がMを引き受けなければ、007映画は今日まで続いていなかったと思う。

 ジュディ・デンチが3代目Mとして登場したのは、東西冷戦終結後に初めて制作された『ゴールデン・アイ』(1995)からだ。この作品は「スパイの必要性」すなわち「007映画の存在理由」が問われた作品だった。ここで就任したばかりのMは、007ピアース・ブロスナンをこう切り捨てる。
 「あなたは女性蔑視の太古の恐竜で冷戦の遺物」
 素晴らしい一言だった。このセリフによって過去の007映画をすべて古典扱いにし、新章突入を高らかに宣言したのだ。
 さらに1999年、ジュディ・デンチが『恋に落ちたシェイクスピア』でアカデミー助演女優賞を受賞すると、Mの存在感は一気に増した。ジュディ・デンチの力を借りてMの内面を描くことに成功し、『ダイ・アナザー・デイ』(2002)では今作の布石ともいうべき、Mの非情な性格にフォーカス。007も所詮“駒”のひとつでしかないことを我々に知らしめた。

 就任から今日まで、M・ジュディ・デンチの功績は計り知れない。
 だからこそ彼女の最期は一つの物語として描かなければならなかった。今回の007が立ち向かうのは民主主義の敵でもなければ、大英帝国の敵でもない。Mの敵なのである。そこにスケールは必要ない。必要なのはジュディ・デンチに相応しい品格だ。不気味な笑みを浮かべながら現れたのは、アカデミー賞俳優ハビエル・バルデムだった。まったく申し分ない敵だ。ロングショットの長回しで登場させたサム・メンデスのアイディアも秀逸だった。

 007映画として観てみるとダニエル・ボンドの過去2作とは見劣りがする。
 そもそも『カジノ・ロワイヤル』(2006)と『慰めの報酬』(2008)は前後編で描かれたドラマであるから比較にもならない。しかしMを主人公にしたスピンオフ映画だと思って観ると、いくつかの不満が収斂され、よく出来た映画に見えて来るから不思議だ。特にMと007の主従関係は前2作でも丁寧に描かれていて、まさにその集大成というべき作品に仕上がっているのだ。
 M・ジュディ・デンチをリスペクトしてきた僕には満足。その一方で新作『スペクター』に対する不安が芽生えてしまった。ジュディ・デンチのいない007映画は一体どうなっているのだろう。


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