劔岳 撮影の記 標高3000メートル、激闘の873日(2009年・日本) [2012年 レビュー]
監督・撮影:大澤嘉工
本編を観たのは2年前。すでにメイキングも劇場公開されたあとだった。
「メイキングが劇場公開?」
普通なら驚く。でもこれは実に見応えがあった。まさに「もうひとつの劔岳点の記」である。
実を言うとずいぶん前からウチのハードディスクに入っていた。
ここ数年録画する本数に対して、観る本数がまったく追いつかず、現在のストックは230本強。ハードディスクの要領も残り少なくなって来たので、いくらか間引きしようとした中の1本だった。しかも早送りで雰囲気だけ観ようと思ったら、結局ノーマルスピードで最後まで観てしまった。
それは面白いとか、面白くないとかのレベルじゃなかった。
ただ登るだけでも大変なところへ、撮影機材と美術品と衣装と食料と水を持って、しかもリスクヘッジのためにわずか20人という最小人数で登り、撮影し、時には天候不良のためにひたすら待ち、結局タイムアップとなり、また山を下りるという、正気の沙汰とは思えない仕事を黙々とこなす男たちのドMぶりから目が離せないのだ。
観ていて気持ちがいいのは、演出部も撮影部も美術部も俳優部も制作部もなく、全員で仕事をしないとゼッタイに撮り切らないという危機感の下、一致団結しているところだ。特に俳優部の浅野忠信と香川照之の開き直り方は、実に気持ちがいい。
俳優たちにとってメイキング班のカメラは時に疎ましいものだ。彼らは監督の「スタート」から「カット」までが仕事であって、それ以外は本来仕事ではない。しかし、こと劔岳に限っては「無事に山を上り下りする」ことが最大の仕事だったのだ。だから俳優たちの素顔もきちんと“見せ物”になっているのだろう。
と言いつつ、やはり本作の主役は木村大作である。
木村監督は撮影当時68歳。誰よりも雪焼けしている監督の顔を見ていると、「なぜそこまでして?」という懐疑を通り越して、「映画制作」という仕事の“魔力”を感じずにはいられない。
もしも本編、メイキング共に未見の方がいたら、メイキング〜本編の順に観ることを勧める。メイキングを観てしまったら、もはや本編に文句などつけられない(笑)。
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