So-net無料ブログ作成
検索選択

ヤクザと憲法(2015年・日本) [2016年 レビュー]

監督:圡方宏史
プロデューサー:阿武野勝彦

 レビュー以前にまず「テレビの限界を映画で越えようとする東海テレビの姿勢に拍手」と書こうと思い、念のために「これって地上波で放送してないよな」と確認をしたら、きっちりテレビでもOAしてた!いやいやいや逆にスゴすぎるやん!東海テレビ!!

 僕もテレビ番組のプロデューサーを生業としているので、ヤクザの事務所に入り込んでカメラを回していると聞いただけで感心した。次に「どういう交渉をして実現したのか」が気になった。だってヤクザが何のメリットもなしに面倒なテレビ局の取材など受け入れるはずないからだ。実際、東海テレビは多くの組に断られたという。ところが二代目東組二代目清勇会の会長だけが、“ある理由”から取材を引き受けた。その理由は観れば分かる。実は取材する側もされる側もWinWinだったのだ。
 WinWinなんだけど監督の圡方は冒頭でちょっとだけドヤ顔をする。実際に顔を見せるわけではない。「取材の条件」というテロップを出してヤクザを口説き落とした自分たちの仕事を自慢するのである。その条件とはこうだ。
 「取材謝礼金は支払わない」
 「収録テープ等を放送前に見せない」
 「顔のモザイクは原則なし」
 これは「私らは交渉の末に真正面からヤクザを取材させてもらってますけど何か」というアピールなのだ。しかしテレビで放映するためにはこれくらいのエクスキューズは必要だっただろう。
 一方で取材を受けることに決めた二代目東組二代目清勇会の会長にとっても、周囲に対するエクスキューズは必要だったはずだ。それが「暴力団対策法が施行され、槍玉に挙げられている側から、真っ当な発言をする機会を得る」ことだった。

 かつて『A』というドキュメンタリーがあった。やはりテレビ出身の森達也がオウム真理教の中に入り込み、オウム信者の側から一連の騒動を見つめた秀作である。本作も『A』と同じで「立場が変われば見方が変わる」ことを我々に教えてくれる。
 僕は反社会勢力を肯定はしない。しかしだからといって反社会勢力に属する人たちとその家族の「憲法で保障された基本的人権」を無視していいとは思わない。いや、この作品を観て初めてそう思った。ヤクザになった人たちは、犯罪を犯したくてヤクザになったわけではない。誰かに認めて欲しくて、あるいは自分を救ってくれた人の恩に応えたくて、あるいは何を為すべきか分からなくてヤクザになっているのだ。どうだろう。一人の人間としてごく普通の願いや想いや悩みに聞こえないか。

 このジャンル。テレビにとってタブーと言われているが、実はヤクザと向き合うことの面倒臭さが先に立って、テレビマンの誰も向き合おうとしなくなっただけなんだと思う。もちろん視聴者からのクレームも気になる。本作のような描き方の場合「東海テレビはヤクザの肩を持つのか」と言いがかりをつけられることも十分に考えられたはずだし、実際にあったのではないかと推察する。しかしそれよりも「伝えるべきこと、改めて考えるべきこと」があるんじゃないか?と腹をくくった東海テレビのスタッフには改めて敬意を表したい。
 欲を言えば、「部屋住み」と称されるヤクザ見習いの男の子に「なぜヤクザになりたいと思ったのか」は聞いて欲しかった。
 それでも歴史に残るドキュメンタリーであることに変わりはない。必見。

nice!(8)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 8

コメント 1

うつぼ

上映館が少ない、、のですが、これは見たいですね。
関東に住んでいるとあまりこの手の話題はピンとこないのですが、
反社会ではないかと思いっている存在ではあったので、こうやって
映像に映るのを見られるというのは気になります。。
by うつぼ (2016-01-31 20:10) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。