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ロボコップ(2014年・アメリカ) [2015年 レビュー]

原題:ROBOCOP
監督:ジョゼ・パヂーリャ
脚本:ジョシュア・ゼトゥマー

 1987年作『ロボコップ』のリメイクである。
 リメイクだから「事故によって重傷を負った警官が、機械の体を手に入れてロボコップとなる」というコンセプトは変わらない。しかし決定的な違いがひとつあった。それは「ロボコップとして生まれ変わった主人公が元の記憶を持っていたか、いなかったか」という点である。
 オリジナルを観た我々世代からすると「元の記憶を持たないロボコップが、徐々に以前の記憶を取り戻して行く」という設定のほうがドラマとしては見応えがあった気がするのだが、そこはあえて掘り下げない。比較検証を始めると結果的にオリジナルの再評価をして終わることになるからだ。ただし、2014年というタイミングでリメイクされた背景についてはいささか興味があった。

 アメリカのオムニコープ社は軍事ロボットを開発・販売する企業。2028年、その製品は世界各地で使われていたが、アメリカ国内は軍事ロボットの配備を規制する「ドレイファス法」が存在していたため、市場開拓がまったく出来ないでいた。法案廃止を目論むオムニコープのCEOセラーズ(マイケル・キートン)は、世論も納得する製品の開発を目指し、サイボーグ技術の権威であるノートン博士(ゲイリー・オールドマン)に接触を試みる。セラーズが提案したのは機械に人間の脳を備えたロボットの開発だった。

 冒頭、軍事ロボットのポテンシャルを示すためにムスリムが引き合いに出される。
 そこはニュース映像で見覚えのある中東もしくは中央アジアの傷んだ小さな街。“危険分子”の判別を瞬時にこなす軍事ロボットは、すれ違うムスリムたちを問答無用で尋問し、身体検査を行う。その様子をアメリカのテレビ番組が生中継し、自国の技術が抑止力となってここにも平和をもたらしていると自画自賛する。ところが、この生放送中を狙って一部のムスリムが自爆テロを決行。軍事ロボットとの交戦が全米に放送されることになる…。
 これは相当にパンチの効いた皮肉だ。
 こんな仕事を一体誰がやったのかと確認をしたら合点がいった。監督のジョゼ・パヂーリャはリオデジャネイロ出身のブラジル人で、デビュー作は『バス174』というドキュメンタリー映画。この作品はリオで実際に起きたバスジャック事件をモチーフに、スラムや貧民街の実態、またブラジルの刑事司法制度が貧民層をどう扱うかを描いたものだという。
 本作におけるムスリムは「資本主義という怪物に食い物にされる弱者」として描かれている。つまりパヂーリャはハリウッドデビュー作で「テロの萌芽はアメリカに要因がある」と言い切ったのだ。MGMもよくもまあこんなことを許したもんだと感心するが、しかしこれはあくまでも“つかみ”であって、ロボコップの敵はISILではなかった。例えばバットマンがゴッサムシティ、スパイダーマンがニューヨークを拠点にしたヒーローであるように、ロボコップは昔も今もデトロイトをホームとしたハイパー警察官なのだ。
 ではなぜデトロイトが舞台となったのか。それはここが全米で1、2を争う危険な都市だったからだ。

 1980年代。デトロイトは長らく続く自動車工業の不振から失業率は高く、生活苦による犯罪率も上昇。治安の悪化に伴って人口は流出して税収は落ち込み、警察は人員減を余儀なくされて、結果治安がさらに悪化するという負のスパイラルに陥っていた。そこに巨大コングロマリット企業が乗り込んで街を支配する、という近未来設定がオリジナル版の『ロボコップ』だったのである。
 そして2013年7月。デトロイトは本当に財政破綻をしてしまう。オリジナル版で描かれた近未来の姿が現実のものとなったのだ。リメイクの話は2005年から出ていたというから、この財政破綻がリメイクのきっかけではないにしても、2014年の公開はまさにドンピシャのタイミング。プロデューサーは「時代の流れを読んだ結果」と胸を張っても誰にも非難されないだろう。

 さてその中味について。前述した通りオリジナル版を観ているため「元の記憶を持たないロボコップが、徐々に以前の記憶を取り戻して行く」という設定の方が面白いと思うのだが、「記憶を持ったまま」という設定もこれはこれで見応えがあった。自らの身体がどうなってしまったのか鏡越しに対面するシーンは『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』で、ダース・ベイダーとなってしまったアナキンの絶望を思い出すし、続く家族との対面シーンでも実にいろんなことを考えさせる。だからこれはこれでいいのだけれど、オリジナルのストーリーを継承するためにアレックス(ロボコップ)の感情を抑制し「記憶を失ったも同然」とするのは反則。それなら最初からオリジナル版と同じ「元の記憶を持たないロボコップ」で良かったはずだ。
 クライマックスは「生みの親に疎まれて始末されそうになる」という『仮面ライダー』的展開になるのだが、これにも少々不満がある。なぜなら結局は《ロボコップ対軍事ロボット》という構図になるからだ。ロボコップのカタルシスは、一歩間違えば警官が命を落としかねない凶悪犯罪をいとも簡単に解決するところにある。そういう意味ではISILが敵でも良かったのだ。しかしあえてそうしなかったからには、デトロイトの犯罪抑止力となる活躍をもう少し見たかった。

 「まるでバットマンのよう」と一部で酷評された黒いスーツ。個人的には好きだ。しかし車からバイクに乗り換えたために、警官のコンビネーションが描けていないのは残念。相棒との関係性も途中まで良く描けていたので、いわゆる「ポリスストーリー」にも期待をしたのだけれど見事に外されてしまった。「脚本って本当に難しいなあ」と痛感した1本。


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